納棺士の腰問題
やってしまいました。
腰問題。
納棺士にとって、腰痛は職業病です。
この世での最後のお風呂、「湯灌の儀式」は、お湯を20ℓのタンク二個に入れて移動しますし、自分より重い故人を抱えてご移動することもあります。
着せ替えをする時も、お体が大きい方だとスッという感じではなく、よいしょーと起こすことになることも。
布団や棺に寝ている方へメイクや、処置を行う際も全て中腰です。
書いてるだけでも腰が痛んできそうですが、納棺士とはそういう、日々の腰をいじめているような仕事です。
納棺士に腰痛は付き物と言っても過言ではありません。
私達、納棺士の仕事は葬儀会社からの依頼で始まります。私達納棺士は葬儀会社の下請け会社であります。
葬儀会社から会社に送られてきた依頼書には「お体大きいです」と注意書きがありました。
覚悟はしていきました。
が、想像を3倍は超えていました。
86歳と聞いて、女性と聞いて、そこまで覚悟せず、安置室に向かうと、柩に入るのかと思う横幅です。
もしかするとご病気で浮腫んでしまうこともあるかもしれません。
しかし、今回の大きな原因は亡くなった後に起こる死後の変化が大きく関わっていました。
棺の大きさは6尺、6.25尺、6.5尺が一般的です。
一番大きな6.5尺だと、柩の種類によってちがいますが、外寸で長さ約195㎝巾は約60㎝ぐらいです。
6.5尺の棺にギリギリ。実際ご移動するとかなり窮屈そうです。
胸には手術跡があり闘病された痛々しい傷跡が見えます。
犯人はこの傷の様です。
傷があったり、敗血症などの死因によって起こる死後の変化に、巨人化という現象があります。
体の中に腐敗によるガスが発生し、体が大きくふくれてしまいます。
そうなると納棺士に出来ることは少なくなります。
ガスにより押し出された血液を拭き取り一刻も早く冷やしてこれ以上腐敗が進まなくなるようにしなければなりません。
出血をとめ、着せ替えを2人がかりで行うと今度はメイクです。
鬱血したお顔に化粧をのせます。
遺影のお顔とはちがうのはわかっていても、少しでも生前に近づけたい。出来ることを探します。
こういう時、初期の段階でエンバーミングを選択出来ていれば、、、と思います。
エンバーミンは体の中の体液や血液を、調合した薬品入れ替えることで、ドライアイスを当てることなく衛生的な環境でお別れの時間を過ごしてもらえます。
もちろん、お体がガスで膨れてしまうこともありません。
葬祭業の大切な役割って、ご遺族に選択肢を作っていく事だと思います。
はじめての体験であるご葬儀をどうすれば、ゆっくりと安心してお別れしてもらえるのか。
プロとして提案できるのは葬儀会社の担当者であると思うのです!
と、つい、熱く語りましたが、納棺式ではギリギリ頑張っていた私の腰も終わる頃には本格的に痛くなり、ご遺族のまえからエビのように、中腰後ろ向きで退席いたしました。
明日あたり暖かい温泉にでも浸かりにいきますか。
納棺士の腰問題に改善策を見出せる日はまだ、先のようです。