亡くなった人に呼ばれる話
時々
あー、私今日この故人に呼ばれたなって思うことがあります。
例えば、千葉県の納棺式のお手伝いに行った時、そこに来ていた親戚の1人の方に
「以前、私の母の納棺式をやっていただいたの覚えていますか?」と聞かれたことがありました。私と同じぐらい、40代後半のその女性は不思議そうに
「でも、うちは埼玉県なので違う人かしら?」と話かけてこられました。
埼玉と千葉。まさかと思うと思いますが、これがあり得る話なんです。
千葉も埼玉県も東京都内も茨城県もあちこちに出没するので、お会いした可能性はあるのです。
ただ、正直覚えてない。
私は曖昧に微笑んで頭の中はフル回転で思い出そうとしています。
年間400人から500人ぐらいの方のお別れのお手伝いをしているので、ずっと覚えている方は、そうそういません。
なんとなく、あ、この人忘れたなと思ったのか、この女性は続けて
貴方の名前○○さんですよねと、ネームプレートに書かれた名字だけでなく下の名前まで知っていたのです。
あれ?もしかしたら、、、。
思い出しました。私と同姓同名の故人のことを!(正確には漢字がちょっと違うのですが…)
当時、同姓同名の故人に会うことなんて、はじめてだったので「呼ばれた」なと思いました。
あら、同じ苗字!と声をかけていただいたので、黙っていられず、実は名前も一緒なんですとバラしてしまいました。
納棺式では、名前が同じ人ということもあったのか、いつもより、早く打ち解けた雰囲気の中、いろんな思い出話をお聞きすることができました。
ご家族の方は口を揃えて、70歳の私と同姓同名の故人をいつもタバコをふかして、赤い口紅をつけているようなかっこいい方でした、と話されています。
つい、自分まで誇らしく思ってしまいます。
癌で痩せていらっしゃいましたが、最後に赤い口紅を塗ると家族から、この顔だよね!と声が上がりほっとしたことを思い出しました。
後日、こんな離れた場所でまた偶然会うのも、ご縁の深い方なんだと不思議に感じました。
あの時、納棺式でみんなで笑って話せた時間がよかったから、この時間を勧めたのよ。
わ〜そんなこと言ってくれたら、もう2度と忘れません!って握手したいぐらい嬉しくなっちゃいます。
こういう嬉しいお呼ばれは、大抵仕事で悩んでいたり、失敗をして、もう、私はこの仕事続けない方がいいのかも…なんて考えていたりする時なんです。
その度に、また頑張ろう!やっぱりこの仕事最高!と思う。
都合のいい話だけど、勝手な思い込みかもしれないけど、亡くなった方がまだ頑張れって言ってくれてるみたいだって感じてしまうのです。
他の納棺士も偶然行ったご遺族が自分の知り合いだった。という話や3年毎、同じ家でおじいちゃん、おばあちゃん、お父さんの納棺式をお手伝いした納棺士もいました。
出身地が同じだったり、家族構成年齢が近く気持ちが自然に寄り添ってしまうご遺族に会う時、私は故人に呼ばれたような気がして仕方が無いのです。そしてこの現象は納棺士あるあるだと確信しております。