最後にありがとうと言えたなら ~亡くなった方が教えてくれたこと~

大切な方とのお別れの仕方をご遺体が教えてくれました

音の記憶

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先日、自宅で子供達が小さい頃の映像を整理していると亡くなった父の映像が出てきました。

 

今では25歳、24歳の息子達が、映像のなかでは、まだ、4歳、3歳ぐらい。父の膝の上で夕ご飯を食べて笑ってます。

こんな映像が、あったのかと懐かしい気持ちになりましたが、子供達と話す父親の声を聞いた時、本当に突然に涙が「わっ」と溢れてきました。

 

亡くなってからもう10年経つのに父の声を聞いただけで、こんなに心が揺れて涙がでることに驚きました。

 

その時気付いたのですが、私はそれまで父の声を忘れていたんです。

 

父の顔や手は、今でも直ぐに思い出せるのに、不思議です。

 

もしかしたら、耳からの情報「音」の記憶は、留めておくのが難しいのかもしれません。

 

以前、お会いした娘さんは、携帯に残していた「亡くなったお母様の声」を聞きて納棺式を過ごされました。

 

お立ち会いされる遺族は娘さんだけでした。

そこで、挨拶をした際に納棺式というお時間にしたい事があれば、教えてくださいとお伝えしました。

少し考えた後に、娘さんは

 

「母の声を聞いてもらってもいいですか?」

とおっしゃっいました。

 

携帯から流れるお母さんの声は、老人ホームで撮られたもので、繰り返し「大きなカブ」の絵本を読んでいます。

 

娘さんは納棺式で着せ替えやお化粧などにはあまり興味がなく、私に携帯のお母さんの声を聞かせて

 

「可愛い声でしょう」と連呼します。

 

「よく読んでいた本なんですか?」

 

とお聞きすると、娘さんはこの本どころか一度も、お母さんに本を読んでもらった記憶がないそうです。

 

小学校の先生をされていた、亡くなったお母さん。父親のいない環境で、いつも忙しく働かれていました。

 

子供の頃は、母とずっと一緒にいる学校の生徒さんが、羨ましかったのよと、娘さんは笑いながら話していらっしゃいました。

 

よっこらしょ、どっこいしょという、お母さんの絵本を読む優しい声が、繰り返しながれています。

 

柩にお体をご移動する前のひと時、お化粧を終えたお母さんをじっと見つめている娘さん。

 

2人をみていると、まるで娘さんが絵本を読んでもらいながら、ゆっくりと、お母さんに甘えているようにも見えます。

 

携帯に残していた声はきっと薄れることのない宝物に違いありません。

 

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時々、大切な方を失った遺族から不思議な話を聞くことがあります。

 

それは、亡くなった方が、音を使って何かを伝えにきたという話です。

 

それも、聞いたのは一度ではありません。

 

ある時は

亡くなった方が、以前飼っていたオカメインコの鳥カゴ(今は空っぽ)の鈴が何度も鳴ったのをご兄弟みなさんが、聞いたと話されていました。

 

また、以前伺ったお子さんの納棺式では、音のなる絵本が突然鳴った事もあります。

 

寝ていた時に、以前飼っていた猫の鳴き声が耳元で聞こえた気がして起きたら、訃報を知らせる電話がなったと話されていたご遺族もいらっしゃいました。

 

そんな時、皆さんはとても嬉しそうに話をされます。

 

「最後の挨拶にきたんだ!」

 

「まだ、側にいるんだね」

 

と涙を流されることもあります。

 

声や音が引き金になり、私達の心が揺れて、時には涙が出てくることがあります。

 

もし、死んだ方が私達との繋がる手段を持っていて、それが音という形だとしたら、亡くなった方からのメッセージに心が揺れて涙が出るのは当たり前のことなのかもしれません。

 

 

心に留めておくのが難しい音の記憶。

 

私達は沢山の音に埋れて生活をしています。

2人の子供達が話す声、飼い猫のゴロゴロ甘えてくる音、旦那のうるさいイビキ、母の小さな愚痴話…。

毎日通り過ぎていく大切な音に私は気付いていないかもしれない。

 

今あなたの周りにある、心に留めておきたい音はなんですか?